2024 UCIアジアツアー2.2 TOUR DE KUMANO
2024.05.10
photo : 三井 至
レース概要
UCI(国際自転車競技連合)アジアツアーのスケジュールに組み込まれているステージレース TOUR DE KUMANO (ツールド熊野)が、今年も熊野古道を中心とする3日間のステージレースとして開催された。
海外からの招待チームも参加し強豪が犇めく本大会、例年は5月下旬から6月上旬の開催であるが、今年は梅雨を避けて5月上旬に開催時期を早めて行われた。雨が多い地域のハードなコースレイアウトだけに、時期が早まる事で安定した気象条件となることはメリットがある。チームとしては、シーズン後半の参加レースにも影響するUCIポイントの獲得が最大の目標である。
UCI2.2クラスのポイント配点
ステージレースとなる2.2クラスは、各ステージの上位3名と、全ステージのゴールタイムを合算した総合時間の上位10名に以下のUCIポイントが付与される。各チームの所属選手のUCIポイント累計が、今後のUCIレースの招待を得る基準となるため、数少ないチャンスで結果を残してゆく事が重要である。
各ステージ
1位 7点
2位 3点
3位 1点
最終順位(総合時間)
1位 40点
2位 30点
3位 25点
4位 20点
5位 15点
6位 10点
7位 5点
8位 3点
9位 3点
10位 3点
【出場選手】
床井 亮太
グルド ダニエル
高梨 万里王
山口 瑛志
夏目 天斗
サウル エヴァー
【出走人数】
94人(16チーム)
【第1ステージ】
2024年5月10日(金)
古座川清流コース(和歌山県東牟婁郡古座川町)
126.7km(41.5km+42.6×2周)
LIVE動画:https://www.youtube.com/live/10M03OkCkqk?si=iF60M27voQqXWsK4
ステージレースは、毎日完走しなければ翌日の出走が許されない厳しいレースでもある。そんな中でも日々のリザルトと、総合成績上位を目指して、チーム一丸となりチャレンジしなければいけない。
チームは昨年総合成績トップ10に2名を送り込みUCIポイントを獲得した相性のいいレースであり、今年もステージ優勝と、総合トップ10(UCIポイントの獲得)を目標に据えレースに挑んだ。
第1ステージのコースはツールド熊野として初めて採用される古座川清流コース。道幅が狭い区間や、アップダウンと平坦なコースが程よくレイアウトされ、集団スプリントにも逃げ切りにもなるコースと目されていた。
レースがスタートするとアタック合戦が始まるが、スプリントに向けて集団をまとめたいチームもあり決定的な逃げが生まれない。道が狭いことで、登りに向けた位置取り等で集団はペースの上げ下げをしながらハイペースでレースが進行していく。
チームからも、床井、ダニエル、山口、高梨といった選手たちが前方の動きに参加して攻撃を仕掛けていく。
最終周回には、山口が積極的な抜け出しで、逃げ切りの可能性がある数名の逃げを形成する場面も演じて見せた。しかし、集団も最終局面でペースアップを図りこの逃げを許さない。レースの勝負は、最終周回に集団が割れ、前方に残った30名でのゴールスプリントに持ち込まれた。
最後まで前方集団に残った、ダニエル、床井、山口のうち、ダニエルと床井がスプリントに参加。チーム最上位はダニエルが5位に入った。純粋なスプリンターではないダニエルだが、最後は自足とコンデションの良さを見せる形となった。総合でも良いポジションにつけ、総合とステージを狙っていける好感触を得ることができ、幸先の良いステージとなった。
明日以降も積極的に前でレースを展開するなかで、ステージと総合成績に繋げていきたい。
結果
1位 ジョン カーター(CPU キャッシュ・パー・クップ)
2位 岡 篤志(JCLチーム右京)
3位 山本 大喜(JCLチーム右京)
…
5位 グルド ダニエル
12位 床井 亮太
33位 山口 瑛志
66位 高梨 万里王
82位 サウル エヴァー
83位 夏目 天斗
【第2ステージ】
2024年5月11日(土)
熊野山岳コース(和歌山県熊野市)
107.7km(38.9km+17.2km×4周)
LIVE動画:https://www.youtube.com/live/r8ZSitNndmI?si=W5PPXw7KcUjfbeHd
3日間で開催されるUCI公認ステージレースのツールド熊野2日目。
昨年同コースで7位に入り、前日5位に入ったダニエルや、床井を軸にレースに挑む。この熊野山岳コースは、最も登りが厳しいクイーンステージに位置づけられる。昨年までコースに含まれた札立峠という最も長い登り区間が外されたものの、千枚田の登り(約3km)を4回通過するという厳しいコースに変わりはない。
スタート後、この日も逃げを狙い登りの前に少しでもリードを築きたい選手たちによるアタックが繰り広げられる。ダニエルもその流れに乗っていくが大きな逃げが形成されることなくレースが進行。細かい攻撃はあるものの、大きな集団で千枚田の周回コースに突入していく。
登りに入ると、約3週間前の落車の影響でまだコンデションが上がりきっていないエヴァーや、夏目が少しずつ遅れてしまう。メイン集団に残るダニエル、床井、高梨、山口の4名にレースを託していく。
その後4名は順調に集団でレースを進めていくが、3周目の下り区間でダニエルに機材トラブルが起こりストップ。周回コースでペースが落ちない集団に追い付くことは厳しく、大きく遅れてしまう。その直後、床井、高梨にも立て続けに機材トラブルが起こる。床井は機材交換をし、高梨はニュートラルサポート(大会側の機材交換)を受けレースに復帰するが、起伏の激しいコースレイアウトから先頭に復帰する事は難しく、大きく遅れることを余儀なくされた。
一方、先頭で孤軍奮闘したのは山口。千枚田の周回を終え。約20名まで絞り込まれたメイン集団に残った。ゴールまであと3km、最後の区間で少し遅れてしまい優勝争いには加われなかったが、チーム最上位の22位でゴールした。
この結果、山口はU23の総合タイムでトップとなり、U23(新人賞)ジャージを獲得。表彰を受け、レバンテフジ静岡創設以来初となる、UCIレース特別ジャージに袖を通した。
今日はチームにとってのGood DayとBad Dayが重なった。ダニエル、床井、高梨のトラブルが重なり大きくタイムを失った事はチームにとって痛手だが、山口が個人としてもチームとしても大きな結果を手にした。明日は最終日、特別ジャージを着て走る山口をチーム全員でサポートし、U23賞を守り抜きたい。そしてチャンスがあれば、最終ステージのコースを得意とする床井とダニエルで積極的に勝利を狙いにいきたい。
結果
1位 ベンジャミ プラデス(VC福岡)
2位 レオネル キンテロ(ヴィクトワール広島)
3位 ライアン カバナ(キナンレーシングチーム)
…
22位 山口 瑛志
50位 グルド ダニエル
56位 床井 亮太
70位 サウル エヴァー
72位 高梨 万里王
DNF 夏目 天斗
【第3ステージ】
2024年5月12日(日)
太地半島周回コース(和歌山県東牟婁郡太地町)
104.3km(9.8km+10.5km×9周)
LIVE動画:https://www.youtube.com/live/Pd-XB4U7hGU?si=-JaItH31ay3qCsb8
3日間で開催されるUCI公認ステージレースのツールド熊野最終日。
前日にU23総合時間賞の証であるホワイトジャージを獲得した山口。3日目はチーム一丸となりこのジャージを守ることが第一優先となる。新人賞2位の選手とは17秒の差があるため、この2選手の動きをチェックしつつ、同じ集団でゴールすることが極めて重要となる。そのため、チーム全体で山口のフォローに回ることを確認してスタート。また同時に、コンデションも上がりこのコースに適性がある床井でステージ勝負を狙っていった。
特別ジャージを着用する山口は先頭にラインナップ。先頭でレースのスタートを待った。
レースがスタートをすると、逃げに乗りたい選手と、中間ポイントに設定されたボーナスタイムをとって総合順位を上げたい選手の思惑が交錯し、アタックと吸収が繰り返される。リーダーチームのJCLチーム右京が中心となりレースをコントロールするなか、3名の逃げに2名が追走する形で5名の逃げが形成される。
一方山口は、テクニカルなコースレイアウトにより集団内での位置取りに苦戦し、落車やトラブルリスクのある最後尾付近でのレースをこなす。エヴァーと高梨が中心になりつつ、床井も山口をケアして集団後方に下がるが、位置取りやバイクコントロールを苦手とする山口は集団後方に位置する時間が長くなってしまう。幸い新人賞に影響のある選手に目立った動きは無いが、集団内の位置も相まって危険な時間が続く。
高梨、エヴァーはサポートに脚(体力)を使ったため少しずつ遅れ、集団は床井、ダニエル、山口の3名になってしまう。このままいけば新人賞獲得かと思われたが、残り3周というタイミングで集団後方にいた山口が補給地点で落車。チームとしてこの事態に十分なサポートをする事ができなかった。山口は自力で一度集団に復帰したが、登りのペースに耐え切れずに遅れ、総合タイムを落とすことになった。これに伴い、新人賞も失う結果となった。
その後レースはゴールまでに先頭集団を捉え、最後までメイン集団に残った床井が集団スプリントに挑み6位でゴールした。
今レースは、チームが特別ジャージを保有し、明確な意思統一をしてチームメイトを守る初めての経験になった。山口の落車は、落車までのサポートも含めて不運という言葉だけで片付けてはいけない。また、落車後のチーム内での連携もまだまだ改善の余地がある対応であった。その結果として、UCIレースの特別ジャージ獲得という大きなチャンスを逃したことはチーム一同とても悔しいものとなった。しかし、特別ジャージを守る経験は、特別ジャージを獲得したチームしかできるものではない。最終的な結果には繋がらなかったが、今年のチームが確実にステップアップしている事を確認するが出来たことは大きな収穫だったと言える。また、床井のUCIレース6位も、ポイント獲得の3位には及ばなかったが、次のレースに繋がる好リザルトで3日間を締めくくることができた。
次戦は8日間にわたって行われる日本最大のステージレース「ツアーオブジャパン」を控える。今回の熊野では、山口の走りだけではなく、床井、ダニエルもステージでトップ10に入り、調子の良さと強さを見せている。また、今コンデションを落としているエヴァーや夏目といった若手も、役割を任せられ経験を積み重ねている最中である。
次戦こそ、チーム一丸となり結果を掴みたい。
結果
1位 岡本 隼(愛三工業レーシングチーム)
2位 岡 篤志(JCLチーム右京)
3位 クドゥス メルハウィ ゲブレメディン(トレンガヌ・サイクリングチーム)
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6位 床井 亮太
41位 グルド ダニエル
49位 山口 瑛志
DNF 高梨 万里王
DNF サウル エヴァー
総合成績
1位 岡 篤志(JCLチーム右京)
2位 クドゥス メルハウィ ゲブレメディン(トレンガヌ・サイクリングチーム)
3位 山本 大喜(JCLチーム右京)
…
22位 山口 瑛志(U23:2位)
42位 床井 亮太
45位 グルド ダニエル